お久しぶりです。副住職の石井綾月です。
皆様にはご心配をおかけいたしておりましたが、住職の体調も徐々に回復して参りました。
先日お参りくださったお檀家様にも、お顔の色が大分良くなりましたね、とお声がけを頂き、住職ともどもありがたく喜んでおります。
さて、本年度より、私は浄土宗青年会東京教区城南組の常任委員を拝命しております。浄土宗青年会というのは、僧侶資格を持つ43歳までの若手僧侶の会で、教化・研修・救援(ボランティアや募金活動)・懇親などを様々な形で行っています。43歳と言えばもはや中堅の年齢ではありますが、浄土宗の開祖法然上人が開宗なされたのが43歳の時でしたので、43歳までを青年会員に含めております。
去る8月31日(水)、宮城県仙台市におきまして、第12回全国浄土宗青年会全国大会が行われました。全国から400名余の青年会僧侶が参加し、研修と懇親を行いました。
「東日本大震災からの復興~希望とともに~」をテーマにかかげ、葬祭業・スポーツ振興・ボランティア活動の分野より、3名の講師の方々にご講義を賜りました。私自身大変勉強になりましたが、印象深いご講義が多かったため、ご報告させて頂きます。
第一講の講師は、仙台の葬儀社の代表を務めながら、震災孤児支援活動「認定NPO法人Jetoみやぎ」を主催されている菅原裕典先生より、「東日本大震災を受けて…葬祭業としての使命感」と題し、「もし東北で震災が起こったとき、どのような準備があれば予測される被災者の方々を丁重にお弔いできるか」という視点で、震災に対する真摯な取り組みについてお話いただきました。
ご著書「東日本大震災『葬送の記』」も拝読させて頂きましたが、阪神淡路大震災のボランティア活動の経験から、地震保険や発電機、食事の供給施設などを準備されていたことがとても参考になりました。本山でもより手厚い備えを心がけようと存じます。また、想像を絶する数のご遺体に対し、不眠不休で「宮城県葬祭業協同組合」の対策本部長として尽力されたこと、そのお人柄のために全国の取引業者の方も我が身を切ってご協力くださったこと、心無い言葉を投げつけられることがあってもじっと耐え、利益を超えた使命感をもって全社員の方がお勤めを続けられたことにも心を打たれました。衝撃を受けたのが、火葬が間に合わず仮埋葬されていた方々の棺を掘り起こし、ご遺体を新しい棺に納め、改めて火葬をされていた、というくだりです。私がもし同じ場所にいたとして、僧侶としてしっかりとお勤めはできるだろうか、覚悟はあるのだろうか、ということを深く考えさせられました。今後もご著書を再読し、研鑽に努めたいと思います。
「東日本大震災『葬送の記』」
![]() |
![]()
続いて第二講は、株式会社楽天野球団取締役副社長、星野仙一先生より、「我が野球人生」と題しまして、震災を乗り越え楽天を日本一に導いた、マイナス感情をエネルギーへと変える心構えについてお話を頂きました。
震災当時、楽天球団の選手たちが「こんな状態でとても野球などできない」と言ったとき、監督は「お前たちは何のためにいるんだ。プロ野球選手として、被災地に希望を与えるべきじゃないのか」と言われたそうです。その後も練習を返上して被災地の方々を訪れ、敗北に耐えながら試合を続け、数年後。監督は選手に「これだけ被災地を巡ってきて、被災地の子供たちに楽天の選手の優しさは十分伝わったと思う。次は試合に勝って、子供たちに勇気を与えよう。子どもはやはり強いものに憧れる。震災などはねのけてやろうという勇気を与える番だ」と伝えました。一度は巨人に日本シリーズ最終戦で敗れたものの、次の年についに楽天球団が優勝した時、不覚ながら涙が流れたそうです。軽妙なお話ぶりながら、「人には必ず妬みや恨みなどのマイナスな感情がある。それをそのままにせずに、エネルギーに変えていくことが肝要だ」という大変ありがたいご講義でした。
第三講といたしまして、歌手でありながら保護司、矯正支援官の資格を持ち、矯正施設にてコンサート活動を行っているPaix2(ペペ)のお二方より、「ともに生きる…ほんとうの幸せとは」と題し、お話を交えた明るく楽しいコンサートをご演奏頂きました。
「犯罪被害者のご遺族の気持ちを考えると、とても明るく、楽しいだけというわけには行かない。けれど、人は過ちを犯しても、機会を頂くことで償うことができる」「震災時にも明るい励ましの歌を歌って良いのか、本当に悩んだけれど、子供たちの笑顔のために頑張ることができた」というお話がとても印象に残りました。私たち僧侶も、悲しみの場で法話をさせて頂きますが、あまりに大きな悲しみの前で、通り一遍の仏教のお話をしてもいいものか、悩むことも少なくありません。生涯考え続けなければいけない問題だと思います。
先生方のご講義を通じ、また仙台の空気に触れることで、東日本大震災七回忌を迎える本年の夏、改めて震災復興やご遺族の方々と、そして各御寺院を始めとして様々な立場で被災地を支えてこられた方々に、思いを致すことができました。
日々のお勤めの中、このような貴重な機会を頂けたことを皆様に感謝致します。
合掌



