ともいき

聖号十念

立冬の候ではありますが、小春日和どころか大春日和続きの昨今でございます。先日、8カ月ぶりに他寺院にお参りする機会に恵まれました。「介護者カフェ」という浄土宗寺院による社会貢献活動の一環で、介護に関して自由にお話をしていただく行事です。時節柄、長らくオンラインでの開催となっておりましたが、8カ月ぶりに実験的に再開する運びとなりました。

香念寺様は松光寺の親戚筋の御寺院です。2カ月に1度「介護者カフェ」を開催されており、今回で22回目になるそうです。初めてお伺いしたのは4年程前、私の父が突然倒れ、病状が悪化する中、妹のお腹に3人目の命が宿りました。私一人で介護をするのだろうかと悩んでいたところ、香念寺のご住職が「介護者カフェ」への参加をお勧めくださいました。参加者のお話を聞くにつれ「私一人が悩みを抱えているわけではない」「介護用品は意外に安く借りられる」など、様々なことが分かり、段々と気持ちが落ち着いていきました。幸い父の病状も改善してまいりましたので、以来ささやかながらお手伝いをさせていただいております。

香念寺御本堂。青銅づくりの屋根が大変立派です。古色を帯びた手すりにも風情があります。

境内の七福神、弁財天様。毎年6月に御開帳されるそうです。

庭師さんに丹精され、鉢植えの花々が可愛らしい寺庭。

感染症対策全般に加え、お茶はペットボトルをお配りし、お菓子も個別にお土産袋に入れてお渡しする形を取りました。定員制にしたため、いつもの半分ほどの人数となりましたが、久々に拝見する皆様のお顔がとても懐かしかったです。それぞれ様々なご事情の中、近況などをお話くださいました。

オンライン開催から今回の会を経て改めて気づいたのは「直接集まることの良さ」でした。オンラインは安全で便利ですが、機械が苦手で取り残されてしまう方の寂しさがずっと気にかかっておりました。また、直接お目にかかることで、声や表情だけでなく、姿勢やボディランゲージでお気持ちが伝わることがあります。参加者の方々が醸し出す温かい雰囲気も改めて貴重なものであると感じました。私にとって最も嬉しかったことは、「帰宅されるお一人お一人を丁寧にお見送りできたこと」です。参加者の方が笑顔で一言二言残してお帰りになる、そのお姿に今まで力を頂いてきたのだな、と気づかされました。

また、香念寺ご住職の「浄土宗には『ともいき(共生)』という言葉があります。私たちの誰もが介護し、介護される立場になりえます。また介護には正解というものはありません。そんな先の見えない日々の中で、互いに許しあい、支え合って共に生きて行こうというのが『ともいき』であり、介護者カフェという場でもあります」という言葉がとても心に残りました。

今流行っている病も、介護と似通っているように思います。ワクチン等によりいつかは終わりますが、今は先が見えず正解も定かではありません。一人で悩み苦しんでいる方が沢山おられます。そのような中でも互いに許しあい、支え合える機会があれば、心身が少しでも楽に過ごせるのではと存じます。

難しい時節ではございますが、安全を確保した上でこじんまりとでも集まれる場所が少しずつでも増えていきますよう、ご祈念いたしております。合掌